皆さまの職場では、安全面の見直しや健康管理の取り組みは進んでいますでしょうか。今回は、令和7年に改正される労働安全衛生法で注目されている「高年齢労働者の労働災害防止」についてお伝えします。
高年齢労働者の安全確保が「努力義務」に
令和7年の改正労働安全衛生法により、高年齢労働者の労働災害防止が事業者の努力義務として新たに位置づけられます。今後は、国が策定する「高年齢労働者の安全と健康確保指針」に基づき、企業にはより具体的な対策が求められるようになります。この指針は、令和2年に厚生労働省が公表した「エイジフレンドリーガイドライン」を法的に裏付けるものであり、これまでの“推奨事項”から“企業の責務に近い内容”へと一歩踏み込む形です。
求められる主な取り組み内容
新たな指針では、以下のような取り組みが重点項目として挙げられています。
- 経営トップによる安全衛生方針の明確化と体制整備
- 危険源の特定やリスクアセスメントの実施
- 高年齢労働者の体力・健康状態の把握と作業内容の見直し
- 安全衛生教育・訓練の実施
いずれも、「経営層から現場までが一体となって安全を確保するための仕組みづくり」がポイントとなります。
「健康だから大丈夫」は危険な思い込み
厚労省の検討会調査によると、「60歳以上の社員は健康だから特別な対策は不要」と考える企業が約半数に上ります。しかし、加齢に伴う体力や反応速度の低下は避けられず、転倒・挟まれといった労災リスクは確実に高まります。このようなリスクを見過ごすことは、本人だけでなく職場全体の安全にも影響を及ぼします。
「労災防止」はコストではなく投資
人材不足が深刻化する中、高年齢労働者の活用は企業にとって重要な経営課題です。安全対策を単なる「コスト」としてではなく、安心して長く働ける環境づくりへの「投資」として捉えることが必要です。安全教育の充実や現場改善を進めることで、結果的に定着率の向上や生産性向上にもつながります。
まとめ
令和7年改正により、高年齢労働者の安全対策は「努力義務」として位置づけられ、今後さらに実効性が求められます。企業としては、法改正を機に安全衛生活動を見直し、「高年齢者が安心して働ける職場づくり」を早めに進めていきましょう。
